二人揃っての非番。
お昼を過ぎてからフクロウから「庭園に行かない？」と誘われて、足を踏み入れた瞬間に暖かい風に吹かれると大きく腕を上げて伸びをした。
「ここはいつ来ても気持ちいいねー」
「そうだね……ふぁ〜」
隣のフクロウは重たそうにしていた瞼を閉じて欠伸をした。
非番の前の日はいつもゲームで夜更かしをしているから、庭園に誘われたのはお昼寝をしたかったのかも？
「大きな欠伸だね〜フクロウ。少し横になる？」
「えっと……今日は、フラミンゴが寄りかかっても良いよ？」
「えぇ?!…ワタシ？」
思ってもみなかったお誘いにちょっとだけ声が裏返ってしまった。
いつもなら肩を寄せあったり、たまにワタシがフクロウに膝枕をしたりだけど……ワタシがフクロウに寄り掛かる事は滅多にない。
フクロウより少し大きなこの身体は、包んであげるか支えるかで丁度良かったから…。
「…良い、の？」
「うん…良いよ」
遠慮がちなワタシの問いなんか全く気にしてない様に、フクロウは木陰に腰を下ろすと両手両足を広げて「おいで」なんて殺し文句を口にする。
(そんな可愛い顔してズルいよ〜)
緩みそうになる顔を見られない様に伏せながら、フクロウに背を向けて足の間に腰を下ろすと「お、お邪魔しま、す…」と一言口にする。
「えーと、お邪魔されます？」なんて明るい声での返答が聞こえるとゆっくりと身体の重心を預けていく。
大丈夫かな？重くないかな？と気になって腹筋の力が抜けない。
「……あの、フラミンゴ……もっと力を抜いても大丈夫だよ？」
「…あ………じゃあ、もう少し倒れるね」
流石に体格差を考えるとこちらが心配になって気を緩められないので、上半身を預ける位まで身体を倒してみた。
視線を少し上げるとフクロウの顔が凄く近くてよく見える…これは……………良い。
いつもと違う距離感だけど、ちょっと恥ずかしいけど…………安心する。
「フクロウ、大丈夫？重く、ない？」
「全然大丈夫だよ……なんだか、ちょっとだけ嬉しい…」
「嬉しい？」
「うん……いつもは私がエマに寄り掛かってるから…たまにはこういうのも…良いかなって………あっ、えっと…エマが、嫌じゃなかったら、なんだけど……」
微笑んだり、照れたり、焦ったり……話しながらコロコロと変わるフクロウの顔をいつもと違う視線で見ていると心がポカポカしてきて…今までとは違う幸福感が溢れてくる。
背中で感じるフクロウ…波瑠の体温が心まで温めてくれる様な感じが愛おしい…。
「全然、嫌じゃないよ………すっごく嬉しい」
「……えへへ」
揺れる木漏れ日が視界を微妙に暗転させてくるけど、波瑠の歯に噛んだ笑顔だけはワタシの中でキラキラしていて…暖かい風も、その風で揺れる波瑠の髪も忘れたくない大切な思い出になる。
ずっとこんな日が続けば良いのにと願う反面、早くこの戦いを終わらせたいと言う思いも強くなっていって……それでも、いつになれば終わるのだろうかと不安が募っていく事だってある。
ぐるぐる、ぐるぐる……毎日色々な事を考えている。
それでも…どんな時でもアナタが隣に居てくれたら……ワタシは絶対に幸せでしかないのだろうと思うんだ。
「エマ………暖かい、ね」
「…波瑠？」
「………ｽｩ」
頭の上から小さな寝息が聞こえて視線を上げると、少しだけ口を開けて波瑠は眠ってしまっていた。
やっぱり眠かったんだろうな、と思いながらしなだれた波瑠の左手を同じ左手で握って空いた右手で髪の毛に触れる。
波瑠の体温をいつもと違う体制で感じて、いつもと違う目線から顔を見て……
どうか、ワタシの傍ではアナタが安らかでありますように…。
そう願いながら、いつの間にかワタシも眠りについていた──。